
左官工事の工期目安を知っておくメリット
左官工事は、職人が一つひとつ手作業で仕上げていく工事です。そのため「だいたい何日くらいかかるのか」「その間、生活や仕事にどれくらい影響が出るのか」が分からないと、不安に感じてしまいやすいです。
事前に工期の目安を知っておくことで、引っ越しやお休みの予定、ほかの工事との段取りを立てやすくなり、無理のないスケジュールで計画を進めることができます。
左官工事の工期が長く感じられる理由
左官工事は、単に「塗る」だけではなく、いくつかの工程を順番に重ねていきます。代表的な流れは次のようになります。
・既存仕上げの撤去、下地の調整
・下塗り
・中塗り
・仕上げ塗り
それぞれの工程のあいだには「しっかり乾かす時間」が必要です。乾く前に次の工程へ進むと、ひび割れや剥がれの原因になるため、どうしても数日以上の期間がかかります。さらに、雨天や低温・高湿度の日が続くと乾きが遅れ、安全のため工期を延ばすこともあります。
工期を考えるときに押さえたい基本条件
左官工事の工期は、次の条件によって大きく変わります。
・外壁なのか、室内なのか
・新築なのか、リフォームなのか
・既存仕上げの撤去や下地補修がどれくらい必要か
・シンプルな仕上げか、模様をつけるデザイン仕上げか
たとえば、新築で下地がきれいに整っている場合と、リフォームで傷んだ外壁を補修しながら進める場合とでは、必要な日数がまったく違ってきます。まずは「どこを、どんな仕上がりにしたいのか」を整理したうえで、工期の相談をすることが大切です。
場所別・左官工事の一般的な工期目安
ここからは、左官工事がよく行われる場所ごとに、一般的な工期のイメージを整理していきます。実際には現場の状況によって前後しますが、全体の感覚をつかむ参考になります。
外壁の左官工事の工期目安
外壁は面積が広く、足場の設置も必要になるため、左官工事の中でも工期が長くなりやすい部分です。新築で外壁全体を塗り壁仕上げにする場合は、
・足場の組立と解体
・下地処理、補修
・下塗り、中塗り、仕上げ塗り
などを含めると、数週間程度かかるケースもあります。
一方、玄関まわりや一部の外壁だけをアクセントとして左官仕上げにする場合は、数日から1週間程度で完了することもあります。
外壁の状態や使用する材料によって、必要な乾燥時間や工程数が変わるため、見積もりの段階で「どの工程に何日くらいかかるのか」をざっくり聞いておくと安心です。
室内壁・天井の左官工事の工期目安
室内の壁や天井を漆喰や珪藻土で仕上げる工事は、外壁に比べると天候の影響を受けにくく、工期を読みやすいのが特徴です。
新築で石こうボードの上に直接施工する場合、
・下地処理
・下塗り
・仕上げ塗り
という流れで、部屋の広さにもよりますが、1〜数部屋なら数日から1週間前後がひとつの目安になります。
リフォームの場合は、既存クロスの撤去や下地の凹凸調整といった作業が加わるため、その分だけ数日プラスされるイメージです。リビング1室だけ、トイレや洗面室だけといった部分的な施工であれば、住みながらでも比較的工事を行いやすく、日常生活への影響も抑えやすくなります。
玄関土間や外構まわりの工期目安
玄関土間やアプローチ、ガレージの床など、土間や外構まわりの左官工事では、コンクリートやモルタルの打設と乾燥期間を含めて工期を考える必要があります。
一般的な流れは次の通りです。
・コンクリートまたはモルタルの打設
・表面の左官仕上げ
・人が歩けるようになるまでの養生期間
・車を乗り入れられるようになるまでの十分な乾燥期間
人が歩けるようになるまで数日、車を乗り入れるまでにはさらに日数が必要になることが多く、「いつから出入りができるのか」「いつから車を停められるのか」を工事前に確認しておくと安心です。
工期が延びやすいケースと注意したいポイント
左官工事は、きちんとした仕上がりを優先すると、どうしても予定より工期が延びることがあります。ここでは、工期が伸びやすい代表的なパターンと、そのときに意識しておきたいポイントを紹介します。
天候や季節による影響
外壁や外構など屋外の左官工事は、天候の影響を大きく受けます。雨の日は作業そのものができないことがありますし、気温が低すぎる・湿度が高すぎるといった条件では、材料の乾きが遅れてしまいます。
その結果、当初の予定より数日〜1週間ほど工期がずれ込むこともあります。契約前の打ち合わせで、
・悪天候でどれくらい遅れる可能性があるか
・引き渡し時期をどう考えておくと安心か
を聞いておくと、心構えができて余裕を持って工事を見守ることができます。
下地不良や追加工事が発生した場合
リフォームでは、既存の仕上げをめくってみたら下地が想像以上に傷んでいた、というケースが少なくありません。
・下地のひび割れや浮きが広範囲に見つかる
・サイディングやボードの張り替えが必要になる
・雨漏り対策や防水補修を先に行う必要が出てくる
こうした場合、左官工事そのものよりも前段階の補修工事に日数がかかり、結果として工期全体が延びます。
見積もり時点で「下地の状態によっては追加工事や工期延長があり得る」ことをきちんと説明してくれる業者なら、トラブルになりにくく、安心して任せやすいでしょう。
メンテナンス工事の工期
左官工事は、一度仕上げたら終わりではなく、年月とともに小さなひび割れや汚れが出てきます。長期的な視点で見ると、こまめなメンテナンスの方がトータルのコストを抑えやすくなります。
点検・補修工事の工期目安
年月が経つと、外壁や外構の左官仕上げには、細かなクラックや汚れが目立ってくることがあります。そこで、
・細かなひび割れの補修
・部分的な塗り直し
・汚れやカビの洗浄
といったメンテナンスを行うことで、大きなやり替え工事を先送りしつつ、美観と保護性能を維持しやすくなります。
こうした補修メインの工事は、全面的なやり替えに比べて工期も短く済むのが一般的です。範囲にもよりますが、数日〜1週間ほどで完了するケースが多く、生活への影響も比較的少なく抑えられます。
初回工事の見積もり時に確認したいこと
左官工事を依頼する際には、「今回の工事が終わったあと、10年後・20年後にどのようなメンテナンスが必要になりそうか」を、最初の見積もりの段階で確認しておくのがおすすめです。
・定期点検の仕組みがあるか
・メンテナンス割引やパックがあるか
・その時に必要になりそうな工期やおおよその費用感
これらを知っておくと、「今だけ」の金額ではなく、長い目で見た住まいの計画を立てやすくなります。
工期の説明が分かりやすく、将来のメンテナンスまで一緒に考えてくれる業者であれば、長期的に相談できるパートナーとしても心強い存在になります。
最後に、左官工事の工期目安は、工事内容や現場条件によって大きく変わりますが、基本的な考え方と代表的なパターンを知っておけば、業者からの説明も理解しやすくなります。工期の短さだけで判断するのではなく、仕上がりの質やメンテナンスのしやすさ、長期的なフォロー体制も含めて比較し、ご自身の暮らしに合った左官工事の計画を立ててみてください。
